ラベル

2012年4月9日月曜日

東京メトロ


先日の旅の日記をここに載せる。



今回の旅の一番の目的は東京国際フォーラムで開催のアートフェア東京が目的だったが、
私の人生観を変える大きな出来事が起こった。

時間を気にせず気になったところに行ってみようと思い、
「すべてはベストなタイミングで起こる」という観念のもと、
出発の時間も考えずに行動を起こした。

3月29日~4月1日。
決めていたのは29日の夜に元同僚くんたちと上野で会うこと。
30日にたけだ美術さんで草間彌生展を見て画家の友人とアートフェアに行くこと。
夕方からは原宿テラスでくろだめしに参加すること。
30日、31日夜はかまじいの家に泊めていただくこと。

出発の日は素晴らしい青空だった。天気というものは時にワクワクさせてくれる。
雨も嫌いじゃない。
阪急電車に乗り、みどりの窓口で新幹線の切符を買い、お土産を買い、新幹線に乗り込む。
この流れの何とも言えぬスムーズさ!素晴らしい。

東京駅に着いて皇居が見えたから皇居周りを歩いてみた。
皇居大きい。。。そらそうやな。噂の皇居ランナーも平日にしてはいっぱいいるんだね。
皇居の周りに警視庁や国会議事堂とかが。ここにあるんだぁ~って思った。
んで皇居近くの北の丸公園にある科学技術館で開催中の全日本学生児童発明くふう展を見て、
歩き疲れたから地下鉄で上野に向かっておこうかと思い、九段下駅に向かって歩く。

震災で天井が落ちて死傷者が出てしまった九段会館はここにあるんだぁ~って思った横には
昭和館という建物。http://www.showakan.go.jp/events/kikakuten/index.html
「昭和の紙芝居」展が開催中で入場は17時までで、その時16時40分。
開館は17時30分までではじめはたいして興味はなかったがぎりぎりまでいた。
紙芝居の展示が並んでいて、たいして興味はなくても歴史を感じて楽しかった。
文字が右から書かれているものと左から書かれているものがあったり、
テレビの登場前の娯楽・メディアとして紙芝居があり一種のエンターテイメントだね、
って思ったよ。

上野駅での待ち合わせが19時30分で、1時間半くらい時間があったけど、
お昼も食べてなくて、かなりおなかが空いてしまい、駅にあったHardRockCafeに入った。
http://www.hardrockjapan.com/
お兄ちゃんの影響でか、HardRockCafeというお店は前から聞いたことがあったけど、
行ったことがなかったから、とても気になっていた。
子供連れや家族が意外にも多かった。スタッフからはなんやこいつって視線を感じたけど、気にしないぞ!

メニュー見て高い!と思いながらも、アボガドを使ったソースというのに惹きつけられ
グリルド チキン ケサディアというものとトマトジュースを注文した。
美味しすぎて感動した。安いとも感じるくらいだった。
(タンギーBBQソースで味付けしたグリルドチキン、グリルドパイナップル、
モントレージャックチーズを、トルティアにはさんで焼き上げました。
フレッシュなアボカドから作るワカモレ、サルサ、サワークリームとご一緒にどうぞ。
追加料金でグリルドチキンをグリルドシュリンプ又はグリルドビーフに換えられます。)というメニュー。
大阪のHardRockCafeにもこのメニューがあるようだから、今度行ってみようと思う。
なんやこいつ視線を浴びてこよう。


んで食べちゃったけど、元同僚くんたちと居酒屋へ。彼らは私が店長代行のセミナーで出逢った仲間たち。
後ろのテーブルに居たウド鈴木さんに気が取られる。セミナーで出来た仲間たちはとてもかけがえのないものだ。
私は代行になり初めて大企業の名刺を持つことになった。嬉しかった。嬉しくてみんなに配った。(笑)
企業に守られているのってこんな感じなのね。って思った。
んで、一度経験させていただいたから、もういいやって思った。

その日の泊まるところは予約していなかったが、来る前に家でネット検索して良さげなネットカフェがあったからそこに泊まった。
みんなからは心配されたけど。
フラットスペースでちゃんと横になって寝れるし、狭いとこ好きだから私にはワクワクしちゃうんだよね。
カプセルホテルも狭いから大好きなんだけど、好きな女性専用のカプセルは新宿の方だから今回は泊まらなかった。
12時間コースなんてものがあって、それにした。
貴重品に注意して寝た。

狭いとこが好きだし、きっと私みたいな女性もいるのではないかと思うので、
関西で女性専用のカプセルホテルをしてみたいなぁなんて思った。これを書いてるいま。
今でも女性専用のはあるけど、少ない。デザイン良くても高かったり、
カプセル密集しすぎてなんか微妙だったり。私の頭の中のものが実現出来たらおそらく人気が出るだろうな。

やらないけどね。


起きて、銀座へ。11時からオープンのたけだ美術さんだが、着いたのは10時40分。
近くのカフェに行って読書をしようと思いチェーン店の安いカフェがあったよね、と歩いていると
重厚感ただよう椿屋珈琲館というお店が目の前に現れた。店の前のメニューが少し高く感じ、
躊躇したが、どっしりした階段に惹きこまれた。おじいちゃんの家(中村邸)の階段と頭の中で重なった。
http://www.tsubakiya-coffee.com/pride.html
店舗は2階と3階。

中も大正ロマン漂い、とても心地よい。
ホットサンドに惹かれ、椿屋オリジナルブレンドとのセットを注文してしまった。
1時間後に友人と昼食食べるのに。

昔、ママがつくってくれたホットサンドを思い出す。
美味しく頂いて、高いと思っていたものを安いくらいに感じた。

お金の価値というものは面白い。
話が逸れてしまいそうなので、戻るよ。

2階に座り、あ、3階も見てみたかったな!と思ったら、お手洗いが3階だったのでラッキー!3階も見れた。
魅力的なお店は、お手洗いも魅力的だったりするので、お手洗いも拝見させていただく。

トイレットペーパーの予備を積むだけのお店は多いが、
こちらはトイレットペーパーの先を斜めに折ってから筒のところに入れるという手間を加えていて、
とてもきれいだったのが印象深い。

その後、たけだ美術さんにお邪魔する。嬉しいことに、オーナーは一度会っただけの私を覚えていてくれた。
さすがです。http://www.takeda-bijyutu.com/

草間彌生作品は本当に好きだ。
83歳の今もなお情熱的に作品を創りつづけている。死んでも創りつづけると仰っている。

3月の最後の日曜日に大阪の国立国際美術館で開催中の草間彌生の個展に行ってきた。
画集を買おうかどうしようか悩み、やめておいた。

たけだ美術さんで、美術手帖の今月の特集がちょうど草間彌生特集なのを発見。
私が得たかった内容だったため、購入した。画集を買わなくて正解だった。
この流れ素晴らしい。

会う予定の友人に電話しても地下鉄に乗っていた時だったようで出なかったため、駅に向かおうとしたら、シロタ画廊さんを見つける。草間彌生VS李禹煥 銅版画展がやっていた。
http://gaden.jp/shirota.html
一通り見終わったところで友人から電話。
このタイミング素晴らしい。

おしゃれカフェでランチ。さっきホットサンド食べたけど。
アボガドの入ったバーガーを頂く。アボガド好きね、あなた。

友人とお話。彼女も独特な世界観がある。彼女はかなりの読書家で、
私も最近よく本を読むようになったので、お勧めの本はないだろうかと訊いてみた。
パウロ コエーリョ「アルケミスト」、マーク・トゥエイン「不思議な少年」という本はあなたに合うと思うよ、
と勧めてくれた。と書きながらアマゾンさんでいま注文した。

今年彼女は引っ越しをしなければならないようで、新しくアルバイトを始めるという。
新しく始めるアルバイトは病院の食事を作るお手伝いをするという内容だそうだ。
ワクワクしているのがこちらにも伝わってくるので、私もワクワクした。

ともにアートフェアへ向かった。
3日かけてじっくり見ようと行く前は思っていたが、1日で十分かもと思った。
一通り見て、甘いものが恋しいねと、アリスカフェに入ってみた。
http://www.towafood-net.co.jp/duckyduck/ducks-alicecafe/index.htm
うん、アリスの世界だった。

夕方から原宿テラスでくろだめしに参加する前に、きゃりーぱみゅぱみゅ氏が訪れるお店がある
原宿の竹下通りを歩いてみたくなり、友人と別れ竹下通りへ。

あ、来たことある。と思った。
野猿の最後の撤収Liveで高校時代に「野猿のプリクラがあるらしいぞ!」
と、友人とプリクラを撮りに来たんだっけな。
なぜかあごがしゃくれて写ったのだっけな。

人がいっぱいだったので、通りを突き抜けて原宿テラスへ。http://harajukuterrace.com/
大学時代の先輩の知人の黒田さんがつくるご飯は絶品。おいしかった。
今回の旅はおいしいものばかりと出逢うわね、あなた。

ごはんをつくるお手伝いを少しだけさせて頂いたときに、かわいい女の子が横にいた。
大学生で、春から3回生になるので就活をしなければならないのだけれど、
数社受けて落ちて、本当に就職したいのかわからなくなってきたと言っていた。
私は就職活動せずに卒業後バイクで旅をしながら住み込みでバイトをしたよ。
と言ったら、彼女は「そういうのに憧れるんです!!」と言ってくれた。
私は旅をして自分の部屋を離れて生活していると、自分の好きなものに囲まれた生活が恋しくなり旅を終えた。
なんたって派手なものが好きだからオレンジ色やピンク色や赤い色が混在していないとそわそわする。
大学時代に京都四条河原町の有名な手相のおばちゃんに就活について相談したら、
そのときに考えればいいんじゃない?と、手相と関係なさそうな言葉が返ってきた。
それが頭にずっとあった。

だから彼女には私みたいに就活しなくても楽しく生きてる人間がいるよと、言っておいた。
彼女は少し光が見えたようで今日来て良かったー!!って言ってくれた。
私の存在が人さまのお役に立てたみたいで嬉しかった。

実はご飯を作ってる黒田君の妹さんだった。
お兄さん!妹さんに就活しなくてもいいんじゃない?ってアドバイスしちゃってごめんなさい!
と謝ったら、僕もこんなんですから~wと。

くろだめしには、いろんな方がいらしていたように見えて、ウェブデザイナーや住宅デザイナーや
コミュニティデザイナーやらデザイナーが9割だった。

そこにいらしていた、笑顔の素敵な和kitchin(http://www.nagomikitchen.jp/
の運営をしていてウェブデザイナーのありささんは、ご結婚されてから3ヶ月間「一緒に旅をしよう!!」と旦那さまを説得しつづけ、旦那さまと世界一周をしたそうです。

私が仕事を辞めピ-スボートに行こうと思ったきっかけは人生に変化をつけたかったからだと言うと大きく頷いてくれた。
ありささんも長く勤めていた会社を辞め、世界を旅しているときに、この時間は仕事をしていることもできたけど、旅をすることに時間を使って良かった、このような体験は仕事を辞めたから出来たんだ、と仰っていた。

私が思っていることと同じことを思って感じている方がいるととても心強い。

私の職場の4月度のシフトは3月21日からで、前日の20日の段階ではシフトは31日まで出勤になっていた。
しかし21日の段階で26日が最後の出勤日となっていたから、今回の旅が実現した。
すごい偶然のようで、いろんな歯車が揃い、素敵な出逢いが広がってゆく。すべてに感謝しちゃう。

くろだめしには他にもこんな方が。
婚活マンションを企画しているプロパティデザインオフィスの代表菊池さんはご自身の企画にとても情熱をお持ちで、もっとお話をお聞きしたかったです。http://www.pdo.jp/

そろそろいい時間だったので原宿テラスを出て、10時40分頃かまじいの家へ。http://kamaji.net/
前の週末に、どこに泊ろうかと思っててーと、ジョリパで先輩に相談していて紹介してくれたのが
かまじいの家だった。
百年の歴史を持つ建物で、元々は明治時代から三代続いたかまぼこ屋だったそうです。
住人達はその堂々と枯れたいでたちを愛し、かまぼこ屋の爺様=「かまじい」と呼んでいるそうです。
そこはシェアハウスで個性の強い濃密なメンバー4人が暮らす家。

夜11時くらいに住人3名が集まる。
先輩が連絡を取ってくれていたウェブデザイナーのお姉さまがつまめるものやお酒を用意してくれていた。
お酒を酌み交わし、語り合う。のを眺める。少し話す。
家主は私と同い年の男性で、ピースボートに通訳スタッフとして過去2回乗船したことのあるかたでした。
「自分が訳し話すことで、皆さんに伝わりありがとうと言ってもらえる、こんな充実感のある仕事があるんだ、この気持ちを基準値としてこれからの人生を歩んでいこう。とピースボートに乗った時に思ったね」と。
ピースボートに行くからいろいろ質問した方がいいかな、とかお会いする前は思っていたんだけど、
その言葉を聞いたら、なんだか満たされた。
住人2人は早稲田出身や慶応出身だったりするので流暢に言葉が続く続く。

屋根裏に住む小説家さん。いでたちは絵に描いたような小説家。
袢纏を着て少し猫背の姿。彼の雰囲気に恋に落ちた時に似た感情を抱いた。
彼が発する言葉をもっともっと聞きたくてたまらなかった。

百年の家は隙間風が多く、冬はとても厳しい寒さだったようで、少し暖かくなったこの日、
住人たちは「春だね~呑んじゃいますかッ」と陽気になっていた。それが可愛くて楽しかった。

明日は僕が夜ご飯をつくってあげるよ、と小説家の彼が言った。
とても楽しみに思い、床に就いた。

翌日は風が強く、朝ご飯を頂き、お姉さまと話して部屋に戻ると窓が机の上にはずれて落ちていて
盆栽がひっくり返ってしまっていた。慌ててお姉さまを呼ぶ。
幸い、窓ガラスは割れておらず、盆栽の梅はつぼみが生きていてくれた。

私の好きな大森南朋氏のプロデュースしているグッズを取り扱う代官山のお店へ。
http://www.bjirushi.com/v2/html/index.php
地図を印刷したのにその紙を大阪の自分の家に忘れてしまった。
まぁ歩いてるうちに出逢うでしょう。と歩いていたけど、
雨が降り風がボーボー。折り畳み傘は何度も裏返る。
しかたなくケータイで住所を調べる。
お店発見。なんやこいつ視線を少し浴びる。
お店に来たので目的終了。
大森氏のブランドよりもWACKO MARIAの帽子が欲しい。

向かい側にDr.Martensの正規のお店発見し入り、出る。
代官山駅に入ろうとして入口が分からずウロウロ。
雨に濡れながらウロウロ。

とにかくどこかで色鉛筆と落書き帳とぱんを調達して家に戻ろうとした。
山手線がとまった。
幸い座ることが出来てたので寝た。着いた。降りた。おなかすいた。
どこかでなにか食べたいと思ってもピンとくるお店はなく、歩き続けていたら
100均とスーパーが一緒になっているお店を発見。ラッキー!
色鉛筆と落書き帳とぱんを調達して帰って絵を描く。
今回の旅を通して、自分のホームページを立ち上げようと思ったのでした。
その構想を練ろうかと。頭に浮かぶものをうまいこと描けずにいた。

しばらくすると小説家の彼が現れた。
朝倒れた盆栽を手直しして「僕の部屋見てみるかい?」と言ってくれた。
私の中での屋根裏部屋のイメージとは少し違っていた。
階段の踊り場のようなスペースで彼は暮らしていた。床は木で出来ていてワックスが塗り重ねられている。
壁はトタン。洗濯物を干す屋上につながるガラス戸から外に出るとソファーが二つ。
おいで、と言われ屋上の足場から屋根に下りた。
「煙草を吸う人はここで吸ってもらうんだ」と言っていた。
そうか。ここが居心地いい理由の一つはみんな煙草を吸わないからなんだなと気付いた。
彼の部屋はセンス良く本がトタン壁に飾られ服や帽子も掛けられている。
狭いところ好きにはたまらなく憧れる彼の屋根裏部屋だった。

彼はご飯を作りに去って行った。

住人4人と私が集まり、おいしい彼のご飯をいただいた。
チヂミや葱味噌や大根のナムルなど、おいしくいただいた。
この家では彼が一番料理を作るらしい。

お姉さまがたは、アンチョビや肉みそとかなんかいろいろ常備食を作っているようだった。
この家ではだんだんと肉から野菜中心へ食事をシフトさせていっているのだそうで、興味深かった。

家主の彼はは昼間に谷中で買ってきた陶器の味のあるマグカップを自慢していた。
http://www.iwaoono.com/shitamachi/newpage4.html
私も谷中に明日行ってみようと決めた。

君に見せたい文章がある。と、小説家の彼が本を持ってきた。
「そのあとで彼がまたこういった。「色が行ったり来たりしている。その色のなかに隠れている人たちがいる」
僕はそれらの人たちを追いだしてやろうかと尋ねてみた。すると彼が答えて言った。「君にはその人たちを追い出せないよ。なぜって、君にはその色が見えないんだもの」
ジャン・コクトオ「Le Bal du Conte d'Orgel」序文


食事を終え、この日もお酒を酌み交わす。途中で可愛い女の子がやってきた。
小説家の彼が、昔、舞台の脚本を書いていた時の衣装を作っていたパタンナーの女の子。
彼女も北海道出身。本当に可愛い。
彼女のブランドを紹介しちゃうよ。
FIL DE FER(フィルデフェール)http://www.rolladex.co.jp/fildefer/
鉄の糸という意味なのだそうです。

終電の都合で彼女は帰っていく。

みんなが集まったり私が泊らせていただいている部屋の手前には図書室がある。
床から天井までが本棚になっている。そういう本棚のある部屋に以前から憧れていた。
住人みんなでつくったようだ。

気になる本を読ませていただく。
彼の引いた線があちこちにある。


村上春樹さんのインタビュー集「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」の中からピックアップしてメモした。

常に後ろは振り返らず、新しいものをインテイクしそれを煮詰め、煮詰めきったところで新しいインテイクというダイナミズムを維持していたからマイルズ・デイヴィズの素晴らしさは新しいものの取り入れ方のダイナミックさとネジの締め方の厳しさ、そのふたつにある。

読んでいると励まされるというか、なにか気持ちが高揚していく響きみたいのがある。
僕は結局文章が好きなんですね。文章を書くのが好きで、自分の文体を使って何が得られるかに
すごく興味がある。しかも自分の文体を使うと自分が何を考えているのか、何を求めているのかよくわからなくても文章にするとだんだんわかってくる。そのままだと見分けのつかない無明の世界だから。

せっかくプロとしてものを書ける状況にあるのだから、あらゆる力を振り絞って書かないと、それは人生に対する冒涜だろうと僕は思う。なんでこの自分が物語なんてものを産めるんだろうかとか考えるとやっぱりそれは一種のギフトとして与えられているのかなと感じる瞬間はある。
だからそのために全力を尽くさなかったら何かに失礼にあたるんだ。



本を読み床に就いた。

東京最終日の朝。布団を片付け、静かに箒がけと床拭きをした。
お掃除していたら東京国立科学博物館のインカ帝国展のパンフレットを見つけ今日はここに行こうと決めた。
絵描きなら泊まらせていただいたお世話になった家には絵のプレゼントをするよな、、、と思い描き始めた。

すると小説家の彼がやってきた。「今日はとてもじっくり書けたよ」
彼の習慣は6時ころ起きて散歩したり10時くらいまで執筆するらしい。それから小説の勉強をして、午後は友人に会ったり図書館に行ったりするようだ。

「それは満たされた気持ちになるよね」私が言うと深く笑顔で頷いた。
今日の予定を訊かれ、インカ帝国展を見ようかと思うのと谷中に行ってみようと思っていると伝えた。
もう少し早く聞いていればタダ券あったんだけどなぁ、と。聞くと彼は博物館で先日までアルバイトをしていたようだ。
建設現場で出てきた人骨の土を丁寧にはらいどこの部分の骨なのか調べるというアルバイトだそうで、不思議と不気味な印象とか受けずにやってみたいとさえ思った。

私は本のある空間が好きだと伝えると、
「よし、谷中の僕の好きな本屋さんに連れて行ってあげるよ。きっと君も気に入ると思うよ。今日は午後からサントリーホールで友人がバイオリンを弾くから良かったら一緒に行こうか。
君が博物館に行っている間に僕は図書館に居て調べ物をしとくよ。この図書館もお気に入りなんだ。そこも案内するよ。
博物館に行って、図書館に行って、谷中を歩いて本屋さんに行ってそのあたりでご飯を食べて、午後はサントリーホールに行ってって感じでちょうどいいね」

彼が街を案内してくれた。
旅先に友人ができると旅が一段と色鮮やかになる。天気も昨日とは打って変わって晴天で心地よい風が通る。
案内してくれた街は上野、谷中、千駄木。

家を出ておなかが空いたので肉まんを買っていき、博物館の前の公園のようなところで食べた。
博物館の前に実物大のクジラがいて、クジラとイルカの話になった。
クジラとイルカは他の星の文明から来たという私の突拍子もない話にも、彼はそういうのを僕も本で
読んだことがあるよと言ってくれた。クジラやイルカの記憶は100年以上も続いていて、その記憶というものは他のクジラやイルカとも共有しているんじゃないかと思うんだな。
など話してから私は博物館に。彼は図書館へ。

日曜日だったので博物館はとても混雑していたのでじっくり見ることは難しかった。
マチュピチュの人々は言葉を持っておらず、キープというひもの結び目の数を十進法で情報伝達の手段として用いていたというのが興味深かった。開催期間は6月まであるので、ピースボート出航前にまた来ようと思い、博物館を出た。
彼と会話したくてうずうずしていたのだ。

合流しようとして私は間違えて反対側に行ってしまっていた。
交差点の柵のところに座り太陽をあびて待つ彼の姿を見つけた。
方向音痴で申し訳ないと謝っていると、国立国会図書館こども図書館に着いた。
建物は明治39年に建てられた帝国図書館で、建物を保護するような形で安藤忠雄氏によって再生されている。
この建物もとても趣深い。http://www.kodomo.go.jp/index.html

「ここでぼーっとするのが好きなんだ」と3階のソファーに座った。
ガラス張りで中庭が見渡せる。

こども図書館の展示を見て、谷中へと向かう。
彼との会話は途切れることなくひたすら続く。
こんなに誰かと会話が続くことがあるのかというくらいにお互いに話し続けた。
波長が合うというのはこういうことなのだろうなと思った。
上野から谷中の方へ歩く。

私はこんな絵を描いたらみんなに気に入ってもらえるかなとか考えてる自分に気づいて、
それって他人の目を気にしてることになるんじゃって思ったの。と言った私の言葉に、
僕たちは今はまだ売れた作家ではないから世間からの期待という形はないんだ。
だから〝今〟の僕たちは自分たちの好きなように出来るんだ。今だから出来るんだ。
との言葉をもらった。勇気づけられた。

一緒に直感で行きたい道を歩いてゆく。
東京とは思えないような街並み。私の東京のイメージをどんどん塗り変えてゆく。

許すということを練習しているんだ、最近。
恋人間で何かあっても、私にとって新しい考え方なんだなって思うようになったりしたの。
と言った私の言葉に、
そういうのも大事かもしれないね。でもそれで知らないうちに自分の中でため込んでしまったりしないかな。
と、やさしく言われて、そうなのかもしれないってハッとなった。

自分の理想とする自分と、自分の感情との間にあるものは、なんなのだろう。
なんでも許せる大きな人間になりたい。というところと、
思いもよらない相手の言動。それに対する自分の感情。

鏡の法則を使うと、私も相手にとって思いもよらない言動をしてしまっているということ。
もしくは、自分の人生の勉強のための一部なのか。おそらく両方かな。

何かの流れで私は二葉亭四迷と同じ誕生日なんだよ、と言ったら、
「君はなんてタイムリーなんだろね。僕はちょうどいま二葉亭四迷の勉強をしているんだ」
彼は二葉亭四迷がどんな功績を残したのか教えてくれた。

おなかが空いてきて、彼のおすすめの塩ラーメン屋さんへ。
列が出来ていてしばし待つ。待ちながらトート神のことや、
喜望峰から自転車で日本まで帰ってきたことのある彼の友人のことを話したりしていた。
どんだけお尻丈夫やねん。

本当においしくておいしくてぜひ皆さんにも食べてみて頂きたいくらいです。
麺やひだまりhttp://menya-hidamari.com/
煮卵の絶妙な茹で具合とチャーシューのしっかりした味のバランス。
ピースボート出航の前日に食べに行こうかな。

ラーメン屋さんで恋愛時の感情について語り合った。
恋に落ちた時の感情はうまく言葉にできないけど、すごく素敵な感情で、
私はその感情が大切で好きだな。
恋人関係にならないからこそ語り合える部分と、
恋人になってしまうとそれ以上踏み込まなくて語り合わなくなる部分というのがあるよね。
という私の考えに彼はとても頷いていた。
もしかしたら、お互いに好意はあるけど、恋人じゃないからお互いに得る部分があって
ある種のこれからの時代を生きていく創る者の同志として見えないもので繋がっているような気がした。
彼にもこの数時間後に、私たちは過去世で兄弟だったんじゃないかなって言っちゃった。
まぁ片思いかもしれないけど、いいさ。

ラーメンを頂いた後、谷中銀座商店街へ。ぷらぷらと歩き、商店街を抜けたところに彼の好きな本屋さん。
古書 信天翁(あほうどり)http://www.books-albatross.org/
きっと君も気に入ると思うよ。と言っていた通りとても気に入った。
ズキュンときた。

美術書や建築書もあり見ごたえがある。
こんなところで働いてみたいとも思った。

外のベンチに座って空を眺めている彼。
まぁ座りなよと招かれ私も座り空を眺める。

寒くなってきたので再び商店街を抜け、千駄木の駅から赤坂へ。

地下鉄を待つプラットホーム。
今更になり、私の名刺を渡す。彼もライターだったころの名刺をくれた。
私の愛犬の絵を見て、僕も昔、犬を飼っていて天国に旅立ったんだと話す。
私もこの愛犬は去年亡くなったの。と言う。
なかなか離れられない気持ちを、君の絵で逝かせてあげれるような気がするよ、と言ってくれてジーンときた。
私にできることはこの世から旅立った命をその命を愛したこの世に残っている人々に癒しを届けることなのかな。
彼の言葉は私にヒントをくれる。

赤坂に着き、駅を出て、電柱の広告に目が行った。
フェニックスパワー研究所 宇宙のパワーなんちゃら
http://www.phoenix-power.com/
気になって行ってみるしかないね!ってノリで、研究所前まで行き、
これは・・・ってなってお邪魔しましたと、そそくさと立ち去った。

スピリチュアル的な話も彼は冷静に受け止めてくれる。
彼が今のシェアハウスに来る前は男3人でシェアしていたようで、その時一緒に暮らしていた友人の一人は
今や有名な占星術師ユピテルジョージとして活動している。http://www.ondorinohane.com/index.php
毎週月曜日に無料でケータイに自分の星座の今週の星便りが来るメールマガジンがあるのだけど、それが無料なのに内容がとてもこってりなのだ。逆にいっぱい書いてあって私は覚えれないくらい。
占いに興味があったら、ぜひ登録してみるといいよ。

(ローマ神話の主神という意であるため)ユピテルって名前に入れるところが考えられないと笑っていた。
オーバーソウルについて話していて、ジョージ君は魂はブドウの房のようなものなのではないかと話していたことがあったと彼が言った時、目の前をブドウの絵が描かれたトラックが走り去った。
驚いた私はわー!ぶどうだ!と声をあげて興奮してしまった。
彼はからかってシンクロ!シンクロ!って笑っている。
ジョージ君にもよく、シンクロだろwって言ってからかうらしい。

ビルが立ち並ぶ真ん中に公園のような場所があり、石のベンチに腰掛ける。
景色のいい場所で座りゆっくりするのが好きな人である。

この日はちょうど、オープンハウス~サントリーホールで遊ぼう!http://www.suntory.co.jp/suntoryhall/sponsor/2012/120401.html
という企画が行われていて、建物の外では朝市みたいなイベントが行われていた。昼過ぎだけど。
「春だね~呑んじゃいますかッ」という気分だったので昼間から一緒にビールを飲み、
階段に腰掛け語り合う。

お互いの恋愛の話をしていると、そこにも似たような部分をお互いに持っていた。

ビールを飲んで、ホールの中に入る。
その時はステージに上がろう!という企画が行われていて、私たちも子供に混ざり上がってみた。
小学校のときの合唱団の発表を思い出す。

そのあと客席に座り、再び語り合う。
そうこうしているうちに彼の友人のオーケストラの発表が始まった。
友人は小柄で、前に居る男性の身体にすっぽり収まっていて見えなかった。

演奏が終わり、夕刻。
おなかが空いたねー。誰かご飯作ってくれていたらいいねーと言いながら地下鉄に乗り込む。

彼はシェアハウスの屋根裏部屋に月2万円で暮らしているという。
月に5万あれば暮らしていけるという。週2回バイトをすれば生活出来るという。

谷中を散歩したり、歩いて行ける場所に図書館がありそこで調べ物をしたり。
彼のシンプルな生活にとても興味がわく。

私もその生活に憧れはじめた。
これからの人生の中で、そのようなシンプルな生活をしてみたくなった。

かまじいの家は私のルームシェアのイメージを一変させてくれた。
個性の違う人間同士が一緒に住まうのだから、時に衝突もある。
だが、ものを創る人間が黙々と部屋で製作し、一人の部屋で過ごし、会話もなく一日を過ごしていくのと、
部屋で製作し、部屋を出ると「今日もお疲れ。まぁ一杯呑まないか?」と言える人がいる空間。
業種の違う人たちから受ける刺激。
恋人との同棲生活とは違う空間。

集まる者によってシェアというのはとても可能性に満ちている。
こんな可能性も見える。
「今度こんな商品を開発するんだけど、商品のパッケージデザインに悩んでてね」
「こんなのはどう?」とラフスケッチを見せて、「いいじゃん!」となり、
その後の商品のパッケージデザインを請け負ったりとか、仕事で繋がることも出来るかもしれない可能性とかね。

建物の一部をギャラリーにして、アーティスト仲間と個展を開催したり、
音楽をする仲間がいれば、そこでライブしたりとか、
保育士資格のある子がいれば、託児所としてやっていくこともできるだろうし、

なんだかこれからの時代のシェアハウスというものは私にとって可能性の宝庫に感じてくるのだよ。

あと、私は店長代行になり初めて大企業の名刺を持って企業に守られているのってこんな感じなのね。
一度経験させていただいたから、もういいやって思った。
という考えを小説家の彼に話すと、彼も一度ライターとして働いて同じように思ったそうだ。

この非正規雇用形態が増えている世の中、私はそれを肯定的に受け止める。
私はこれからの人生、いろいろなアルバイトを経験したいと思っている。
そこは彼も同じらしい。

人骨の土をはらうアルバイトとか、とてもやってみたい。
ディズニーランドでキャストとして働いてみたい。
お正月のおせち料理つくるのもやってみたい。

ただ、そこで表現者としての自分の軸はしっかりと持った上でね。

なんだか楽しくなってきた。

家に着くとお姉さまが「ごはんつくるよ、しのちゃんも食べていく?」と台所に立っていた。
「お願いしまーす!!」とお言葉に甘えさせていただいた。

新幹線の最終時間に間に合うように最後だけ時間の計画を立てた。
ごはんが出来るまでの間、朝の絵を完成させようと黙々と描いた。
ごはんが出来て呼ばれる。この感じ、実家のような感じで楽しい。

この家では季節を食卓に感じる。
いい香りの春菊のサラダ、春菊のお味噌汁。
ぬか漬けやお麩の入った炒め物、昨夜の小説家の彼がつくった大根のナムル。
炊き具合の絶妙なおいしいごはん。

食べる事ってたまに面倒な行為に感じることがあったけど、
季節を頂くという日本食の美しさを感じ、食べる事って楽しいなって思った。
みんなでご飯を食べるからこそなんだろうけれど。

「そろそろふきのとう売ってる季節かなぁ」「今日売ってたよー」
そんな会話が飛び交う。

番茶をお茶碗に注がれて飲む。おじいちゃんとおばあちゃんとの食事を思い出す。

かまじいの家は、建物だけでなく、住む人々も風情がある。

荷造りをして挨拶をして家を出る。
住人3名に玄関で見送ってもらい、外に出ると
屋根の上から「しのちゃんまたねー」と手を振る小説家の彼。

絵になるよまったくもう。

アートフェアで何か刺激を受けるものあるかな、とはじまった東京の旅は、
思いもよらず、違うところで私のこれからの人生観に大きな変化をもたらした。

やっぱり人と人なんだなって思った。大切な友人も出来た。

濃厚でありしかし時間の流れがとてもゆっくりで、濃密だ。

ピースボートの出航前にかまじいの家に泊めてもらうことにした。
ピースボートから帰ってきたら関西でルームシェアを始めようかと思う。
ピースボートでシェア仲間が出来たら最高だな。

大阪に帰ってきて、夢だったのではないかと思うくらいに素晴らしい時間だった。
小説家の彼がくれた名刺が夢ではなかったことを教えてくれる。
その名刺は宝物だ。

私が自由に行動することによって、実は不安をためこんでしまってないか恋人にメールしてみた。
「しのが見聞を広める為に口は挟まんよ?」と帰ってきた。

私は大きく受け止めてくれるそんな彼がやっぱり大好きだ。
うれしくって涙ぐんじゃった。

だから今度の週末、彼のために野菜を多く使った料理をいっぱい作ろうと思う。